いつもの椅子

いつもの椅子 | Copyright (C) 2008 hachi

ドアを開けて、一瞬まわりを見渡して坐る椅子。 そこがいつもの場所になるようです。初めはぎこちなく、だんだんとその空間に慣れてくるといごごちの良い自分だけの空間としてなじんでくるような。

「いらっしゃいませ」と、注文を聞き、後は静かに自分の時間を楽しんでもらえたらと・・。たまにそういうふうにいかない時もありますが。

一週間に一度必ず週末に来てくれていた女の人が、いました。必ず坐る席は決まってました。ゆっくりと本を読み、珈琲とCAKEを楽しみながら、半年ぐらいたった時でしょうか。ちょうど2年前の「はち」の10周年の時に、小さな花束を持ってきてくださいました。そして、仙台の方へ引越しすることをおっしゃいました。はじめてお話しました。週末に、あの席で本を読むのが、とても楽しみでしたと話してくれました。次の週も来てくださいました。今日で小樽を離れますと。やはり、いつもの席で。

小さな花束のお礼にと、もし旅の途中で読んでいただければと思い本をお渡ししました。

星野道夫の「旅をする木」(文春文庫)

静かな文章ですが、なんども読み返した大好きの本です。ありがとうございましたと笑顔で彼女は小樽を離れていきました。今日もまた、ドアを開けて、いつもの椅子に坐って自分の時間を過ごしていらっしゃる方達がいます。

小さな見つけもの・・・。

小さな見つけもの・・・。| Copyright (C) 2008 hachi

一昔前は、おそらくいたる所で満開の花を咲かせていたであろう花です。シロバナの延齢草。

白い部分は、がくと聞いてます。今では、わざわざ探さないと出会えない花になってしまいました。

数年前、たまたま車を走らせていた時に、白い色のかたまりが目にはいり、車をとめて雑木林の中に、この花の群生を見つけました。驚きました。陽のあたりぐあいや、土地の状態などなど、おそらくいろんな条件が満たなければ育たない。ビュンビュンと行き交う車の騒音にポツンとそこだけ別の空気が流れているようでした。ほんの一瞬ですが、なぜか山の中にいるような清涼感を感じました。花の詳しい人の話によると、この花は、種が土に落ちて、白い花を咲かせるまで約十年かかるそうです。十年という、年月は本当に様々なことが、変わってしまう年月だなーとふと思いながら。

毎年、この雑木林がまだそのままでありますように

延齢草に今年も出会えるようにと、思いながら見に出かけています。

そして、今年も変わりなく静かに咲いていました。まだ、夏にはいりかけそうな日差しの中で。