クラシックカメラから拡がる恋物語~後編

半世紀を経て現像されたNeopanSS|Copyright (C) Kazuo Yamamoto

前回紹介した幸子さんと一郎さんの物語の続きなのだ。
結論から言う。
半世紀を経たフィルムの現像と写真に、
面白いものが写っていたのだ。

幸子さんの了解を受けて、
札幌で、現像と紙焼きを頼んだ。
上がりの日に電話が来て、現像してみたが、
フィルムの腐食が激しく、
紙焼きは難しいという返事だった。
それでも、出来る限り現像してみて欲しいとお願いし、
5枚のモノクロ写真が現われた。

半世紀を経て紙焼きされたモノクロ大判写真|Copyright (C) Kazuo Yamamoto

早速友人と母親の幸子の元へ届けた。
一冬雪に埋まってたカメラの中の、
半世紀前のフィルム。
いい状態のはずがない。

5枚の写真のうち4枚は、腐食が激しく、
抽象画のようだったったが、
一枚目に撮った写真の中に、女性らしき人が、
後姿で写っている写真があった。
ペン立てがあり、数冊の本が机に積まれている。
窓越しで、電話をしているような女性の線であった。

当時幸子さんも女教師で、まだ夫の一郎さんとは、
付き合ってはいたが、結婚はしていない。

その写真の女性の線が80歳近くの幸子さんと、
似ているのだ。

友人も、その兄も同じ感想を持った。
幸子さんに惚れていた一郎さんが、
こそっと隠し撮りしたのかもしれないと、
ちょっと友人と同じことを言ってみた。

幸子さんは自分じゃないと照れていたけど、
隠し撮りなら分からない。
その撮影された場所は何処なのかを、
尋ねてみたい人が幸子さんには、
いっぱい出来たようだった。

まるで20代のように、
今は亡き一郎さんに、未だ恋しているのだ!

とっても素敵な時間を一瞬でも共有できたこと、
幸子さんから学ばせてもらったことに感謝している。

ちなみに幸子さんと一郎の名は、
あがた森魚の『赤色エレジー』から借りました。

前編はこちらでどうぞ。

Copyright (C) Kazuo Yamamoto